我ながら、研究会始まって以来の劣等生だと思う。
言われたことはやらない、成長しない、結果、いつも怒られる……。
それでも除名されないのはなぜなのか、自分でもよくわからない。
アホすぎてほっておけない、ということなのか、呆れられているのか、もしくはそのどちらもなのか。
どちらにしろ、奇跡的なことである。
研究会メンバーの目は、レントゲンのようだ。
全てを見透かす。
嘘をついていたらすぐにバレる。
ごまかしは効かないし、取り繕ったところで、その瞬間に既にバレている。
みんながみんな、修羅場をくぐってきている百戦錬磨の経営者なのだ。
そんなみんなの前で発表をすると、ここは突かれたくないな、というポイントを確実に突いてくる。
(そもそも僕の発表が穴だらけのツッコミどころ満載、ということもあるが)
こちらはしどろもどろになり、返答に困る。
苦し紛れの返答をすると、さらに深く突っ込まれて、返す言葉もなくなってしまう。
結果、うなだれて凹んで帰宅することになる。
わざわざ好き好んで怒られに行くなんて、と思われるかもしれないが、これはこれで貴重な機会なのだ。
百年企業研究会に入会して4年になる。
僕が4年間、研究会で言われていることは、ざっくりまとめると、次の3つになる。
「成長してまへんなぁ」
「勉強してないやろ」
「日記書きなさい」
もうおっしゃる通りで、ぐうの音も出ない。
やらないといけない、ということはわかっている。
やるべきこともわかっている。
あとはやるだけ。
それが……なかなかできないのである。
頭ではわかっていても、忙しさにかまけてなかなか実行に移せないという、ダメ人間の典型である。
そんな僕を、メンバーは真剣に怒ってくれる。(もちろん、怒られたいわけではないが)
大人になってから、自分のためを思って怒ってくれる存在というのは、ほとんどない。
言い合いやケンカとはレベルの違う、「真剣に相手のことを考えて怒る」ということである。
なぁなぁで、「ええんちゃいますか」と流すこともできるだろう。
そこをあえて怒るというのは、パワーのいることである。
それを厭わずやっていただける、というのはありがたいし、背筋が伸びる思いである。
と、怒られることばかりを強調すると、「恐ろしい会……」と思われるかもしれないが、もちろんそれだけではない。
困っていたらアドバイスをくれたり、こっそり慰めてくれたり、優しさももちろんある。
そして本質を見抜く目を持っているので、それが新たな気付きとなる。
先日、こんなことがあった。
僕が発表をした際、メンバーから「中園くんは女子やね」と言われ、周りの人もうんうんとうなずいていた。
自分の中では全くそんなつもりはなかったし、こんな四十がらみの、禿げたおっさんを捕まえて、どこに女子の要素があるのか、自分ではよくわからない。
別に美に対して意識が高いわけでもないし、ブランドに詳しいわけでもない。(むしろ、普段はユニクロばかり着ているような、おしゃれには無頓着な人間である。)
言葉遣いがオネエっぽいわけでもないし、仕草も普通だと思う。
自分では女子的要素がまるでないと思うのだが、その後、会社のスタッフからも「ゾノさんは女子ですよね」と言われた。
なんとなく小バカにされているような印象を受けていたが、よく考えると、デザインという仕事に関わっている上では、むしろ女子的な配慮や丁寧さは武器になるかもしれない。
男性的な視点以外に女性的な視点を持っているというのは幅の広さにつながるし、穏やかに人の話を聞く、という姿勢もお客様の信頼につながるように思う。
そう考えると案外悪くないのかもしれないな、と思い直した。
こういう部分というのは自分ではなかなか見えにくく、気づきにくい。
それをズバッと本質を見抜いて、的確な表現で伝えてくれるメンバーはさすがだなぁ、と思う。
僕の中には、【仮想・田中先生】【仮想・研究会メンバー】とも言うべき思考が根付いていて、なにかあると脳内で意見をくれる。
「あきまへん」
あぁ、やっぱりそうですよね。
「ここはこうするべきやろう」
なるほど!
「この問題の本質は何や?」
本質……なんだろう?考えてみます。
その声が迷っているときの指針となる。
仕事で悩んだ時、人間関係で悩んだ時、行き詰まった時。
心の中でコメントをもらって納得する。
もちろん、生の声ではないので、勝手な自分の解釈もあるだろう。
それでも、自分とは違う考え方(時に真逆の考え方)が自分の中にあるということは、一歩進んだ思考ができるということだ。
自分だけでは到達できない思考を、後ろからサポートしてもらっているような印象である。
それだけでも非常にありがたいし、研究会に参加してよかったな、と思う。
最近39歳になった。
もうすぐ「不惑」。世間では「迷いのない年齢」ということになるようだ。
これまでは「若手」と言っても許してもらえる歳だったかもしれないが、もうそろそろその甘えも通用しない。
というか、甘えている場合ではない。
従業員数は少ないながらも、一応は経営者である。社長という立場上、自分が成長しなければ会社も成長しないのだ。
みんなそのことをわかっているから、厳しい言葉も言ってくれるのである。
最初にも書いたように、我ながら劣等生だと思う。
そんな僕でも見捨てずに付き合っていただける研究会のメンバーには感謝しかない。
時に厳しく、時に優しく。(厳しいほうが90%ぐらいな気もするが)
みんなに認めてもらえる日が来るのはまだ遠そうだが、「一皮むけたな!」と言っていただける日を夢見て、今日も怒られに行くのである。
2019.02.13
株式会社 晴々屋 中園 陽二
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