会員コラム

田中 義郎
氏名
田中 義郎
会社名
C³ personal creates
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第14回中小企業ではビジネスモデルからビジネスは生まれない

中小企業ではビジネスモデルからビジネスは生まれない
「かぼちゃ」や「卓球台」からビジネスが生まれる
~「10年10倍ムーンショット計画」の取り組みが始まった ~

 中小企業と大企業とでは経営の「本質」が違う。
 中小企業は大企業を小型化したものではない。両者はまったく異質のものである。だから異質の発想で臨まなければならない。
 大企業に必要なものは中小企業にはほとんど要らない。例えば、大企業に必要なビジネスモデルもマネジメントもマーケティングも不要である。
 大企業の命題は規模拡大とシェア拡大、過当競争で勝ち抜くこと。勝ち抜かなければ繁栄の道は閉ざされる。中小企業は熾烈極まる(大企業の)過当競争を高みから見物をしていれば良いのだ。中小企業は過当競争をしてはならない。過当競争からはみ出た独自のフィールドで「No.1」になる。
 ここに中小企業の活路がある。
 それは、規模拡大でもなく、利益の拡大でもない。
 それは、経営者・社員の幸せに繋がる道である。
 提供する商品・サービスの質が他社より優れ、より低廉であれば売れる。これは大企業の発想である。中小企業は、商品・サービスの質や価格だけでは売れない。売り続けるためには「人」(顧客など)の心を動かさなければならない。人の心を突きさす「何か」を備えていなければならない。ここに中小企業の勝機がある。
 人の心を動かすのは人、人の心を突きさす「何か」を創るのも人である。人が中小企業の命運を決める。つまり、経営資源は「人」だと考えればよいのだ。人のレベルが高ければ、ものもお金も情報も勝手に揃っていくからだ。
 中小企業は人だけにこだわれば良い。大企業以上にとことんこだわらなければならない。
 
 人の中心は「経営者」である。
 経営者のレベルが低ければ、いずれ終焉を向かえる。自助努力を惜しむ経営者、目先の動向に一喜一憂している経営者も同様だ。また、社員の器は経営者以上に大きくならない。経営者より器が大きくなった社員は、すぐ会社を去っていくからだ。社員は常に熱い眼差しで経営者の背中を見ている。経営者が怠けると社員も怠ける。
 人と人とを繋ぐのはコミュニケーションである。経営者の器が小さければコミュニケーションのレベルも下がる。仕事のコミュニケーションだけで精一杯になる。器が大きくなればなるほど、コミュニケーションの範囲も広がりも奥行きも増す。経営者と社員の心の繋がりは強くなり「心のネットワーキング」が徐々に形成されていく。
 心のネットワーキングとは、互いに相手の違いを認め合い、尊重し合いながら、本音で語り合う人と人の繋がりだ。対立するところは対立し、マナーを守りながら一定の緊張感をもって出来上がっていく狎れない(なれない)人間関係だ。
(狎れないとは、なれなれしくなり過ぎないこと。百年企業研究会では11年、この関係を実践してきた)
 
 株式会社TIF(代表取締役 遠山達次(敬称略))では、経営者・社員・顧客の三者の心のネットワーキングが創られつつある。媒体になっているのは「かぼちゃ」である。
 彼のコラム「社長のかぼちゃ」を一読して頂くと、そのプロセスがストレートに伝わってくる。経営者が成長を続け、社員が必死に追ってきた。経営者と社員とのネットワーキングがすでに構築されていた。だから、顧客も簡単に巻き込まれた。
 三者の心のネットワーキングが動き始めるとどうなるのか。説明を要しないだろう。間違いなくTIFはどんどん輝いていくだろう。
 「卓球台」も11月から取り組みが始まる。1年後を楽しみしている。

 中小企業においては今まで培った経営常識は要らない。むしろ害になる。
 ぼくのこの提案に対し、ほとんどの経営者はまともに聞こうとしない。中には馬鹿にされていると誤解し、怒り出す経営者もいる。
 「突飛な提案」に拒否反応示す人(経営者)をぼくは「並みの人」と呼んでいる。
 並みの人とは、良くも悪くもない人、特徴のない人、みんなと同じことを考え、同じことしかできない人、常識を超えられない人、殻を破れない人のことだ。並みの人の発想は、批判されることはないが、斬新なものは何もない。既存の発想や考え方では今までと同じ結果しか得られず、成長とは無縁の人生になる。並みの経営者からは、並みの商品・サービス以上のものは生まれない。
 酷な表現になるが、並みの人はいずれ落伍者になる。並みの企業は、近い将来マーケットから消えていく。
 もう1つ。
 中小企業経営者に必要なことは「経営者」になることではない。「人間」に戻ることだ。経営と言う枠組みから離れ、自由奔放に野山を駆け巡りながら仕事をして欲しいのだ。そして、自分の内面に眠っている自らの「魅力」に目覚めて欲しいのだ。
 経営者(社長)という肩書が自由奔放な発想を奪い、人間を狭量にしてしまっている。個性が消え、並みの発想に陥ってしまう。個人的に接すると魅力的な人も、経営者として接すると急に退屈な人になる。
 個人的な話で恐縮だが、今年2月、有限会社C3を解散し、C3 personal creates(個人事業)をスタートさせた。併せて、代表取締役、中小企業診断士、経営革新等支援機関などすべての肩書を取っ払い身軽になった。気のせいかもしれないが、今まで見えていなかった新しい風景がどんどん広がっている。さまざまな「ひらめき」との出合いも多く、急に多忙になった。気分も一新した。目下、新天地で子供のようにはしゃぎ回っている。

 百年企業研究会では先月(9月)から「10年10倍ムーンショット計画」をスタートさせた。
 10年で10倍の成長を目指すビッグプロジェクトだ。
 企業規模や利益を10倍にするのではなく、メンバー1人1人が10年間で10倍の成長を目指す。何から着手するか、どのような方法があるのか、実現する可能性があるのか。まったく不透明である。
 はっきりしていることは、1人では実現しないこと、そして、既存の発想でどれだけ努力を重ねてもたどり着けないと言ことだけだ。10年がかりで未知の世界に足を踏み入れるのだ。
 幸い、われわれにはよって立つ不文律が2つある。
 1つは、病気や突発的なことが起こらない限り、月1回の例会は欠席を認めないこと。つまり、全員顔を合わして議論ができること。そして、One for all,All for oneの精神でネットワーキングされていることだ。
 これから10年、何が生み出されるか、どんな「Big magic」を手に入れることができるか。どきどきしながら3650日を過ごすことになりそうだ。

C³ personal creates
田中 義郎

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