読むドラマ(議事録)

相手を知ることは、自分を知ること。
年齢も業種も異なる経営者たちが、月に一度つどう目的はただ一つ。
決して一人ではたどり着けない月面「本当の自分」に降り立つため。
これはそんな経営者たちのリアルなやり取りから生まれたドラマ(議事録)です。
(禁:無断転載)

 第147回 百年企業研究会内容(2021/5/13)

開会のことば

【蒼天先生】
本日は、諸般の事情で、緑山さんの発表は無しで、墨田さん、黄金さん、銀河さん、水島さん、と、この順番で、「わが社の戦略と課題」というタイトルで発表していただく。
前回、短冊の総括ができていなかったが、総括は、それぞれ、発表の中でこなしていったらどうかな、と思っている。みんなで考えたり課題を出したり、あるいは議論したり、という形で進めたい。
今日は、非常に大変な中、リモートで開催できてよかった。

 

1分間スピーチ

【緑山】
今日私の発表ができなくなった原因について一言。
5月6日にひとり、昨日ひとり、うちのオフィスから二人陽性者が出まして、保健所はじめ関係先などへの対応があり、発表の準備ができておらず、次回にさせてくださいということで、昨日、蒼天先生にご了解いただいた。
コロナを決して甘く見ていたわけではないが。我々は営業の世界の人間で、できるだけ車で移動しようとしているが、恐らく感染源は、電車だろうと。乗客数は、ほとんど減ってないので、そこからふたり感染したんじゃないかと思っている。
皆さんもご注意いただきたいんですけど、感染すると、まず、保健所から連絡がくる。その保健所は、住居のある地域、にとばされる。また、うちの社員は、大阪、滋賀、京都、京田辺市とかいろんな地域にまたがっていて、一人は和歌山の実家に帰っているときに入院したので、4か所5か所の保健所と調整をしなければならなくなり、非常にタイムラグがあって、非常に物事が進みにくい。
私は濃厚接触者には該当はしないが、大阪のPCR検査センター、2,980円で検査してくれるところで、昨日、受診して、今夜11時ごろ検査結果の連絡がくる予定。今のところ、症状も何もないし、ご安心くださいということで。


【水島】
5月になって、やっと2021年が始まったな、という感じ。4月末までばたばたしていたのが、やっと落ち着いて、ゴールデンウィークあたりからやっと、時間ができてきた。
入院していた母親がやっと退院できた。当初1月ぐらいに退院予定だったが、そこから色々あり、リハビリリハビリリハビリという感じで、やっと、5月6日に退院。お祝いをした。入院中ずっと会うこともできなかったので、とても心配だったが、元気は元気で、麻痺とかも残っていなくて、よかった。
帰ってきた途端、また、父親と喧嘩したりして、もうちょっと、穏やかに過ごしてくれたらいいのにな、と思うが、なかなかそういうわけにもいかず。


【墨田】
私のお客さんの知人が、ご自宅のリフォームに関して、満足のいかないところや、工務店さんともめそうになっていることがあり、第三者に見てもらいたい、ということで、私に依頼があり、尼崎へ行ってきた。見させていただいたら、わからんでもないところもあるし、うん、やっぱりこれは、私やったらなおすな、というところも多くて、色々相談に乗って、アドバイスをさせていただいた。
その後2週間くらいたって、もっと雲行きが怪しくなってきて、工務店側が、弁護士をたてて、どうとか、とか言い出した、ということで、更に相談には乗らせていただいて、いい方には向かいそうな感じはしているところ。
お客さんの知人の方は、リフォームを頼むところわからなかったので、インターネットとかで近くの業者さんを探した、ということだった。
なので、誰も得をしない、みんな嫌な気持ちになる話で、自分のところはそういうことがないように、ということをすごく思った次第。
「頼むところがわからない」、というのはすごく不安だし、お客さんがそういうことを思っておられるんだな、ということを身に染みて感じたできごとだった。


【山吹】
3月のこの例会の後、4月5日まで、非常に忙しかった。還暦のお祝いは夫婦と子供だけ、喜寿のお祝いは一族郎党で、その後の米寿のお祝いは、また人数が減る、これから、喜寿のお祝いを狙った仕掛けのインスタ作っても面白いのかな、と、欲張ったら、また4月の5日から、緊急事態宣言がありまして。
先生にも、ホームページも作らんでいい、と言われているし、第二の人生やから、これくらいでおさめていこう、と思っていたけども、なんか知らんけどだんだん思いの規模が大きくなってきている。
今月に関しては、木津川市からまたもう一回地方創生推進交付金の公募が始まったし、雉祥さんもう一回やらへんか、っていうお声がかかって、そんなことしなくてもいいんだけれど、ゆっくりしてたらええんやけども、血が騒ぐていうのか、できたらしようかな、という思いがある。
もうひとつは、「今だけここだけあなただけ」これはある人に教えていただいた言葉で、雉祥のおもてなしは、もうほんと一組でいい、ということで、このキャッチフレーズで進ませていただこうかな、と。これで儲かったら鬼に金棒やけど、こういうふうなスタイルがええのかどうか、結果はどうなるかわからないけれども、今の私の心境。また色々ご指導よろしくお願いいたします。


【黄金】
人間ドッグに行った。体重は下がっていた。ほかの値もよくなってるという期待をしていたが、期待外れだった。まだ、昔のあくがたまっているという状況で、もうすこし節制をせないかんな、という状況。ストレスというか、運動不足っていうのもある。健康管理については、これから一番自分のなかでは、すごく大きなテーマかなと思っている。
前回の例会の、蒼天先生のお話で、前向きな、元気のでるお話をいただいた。60過ぎってまだまだや、という話があって、そうすると、やっぱり健康第一やなとつくづく感じている。
健康に留意した生活を送っている毎日です。


【銀河】
黄金さんと同じく、健康に留意している。歩くのと、整体で習った股関節の体操をやっていて、非常に体調よい。

「関電eサービス」の営業の方が、「電気関係の不具合はありませんか?」と訪ねて来られた。各家庭を回っておられるらしい。
少量だけれども給湯器の水漏れが気になっていたので、相談してみたら、修理について、3つくらい案を出してくださった。その対応が、気持ちよく親切、押し付けがましくなく、的確なアドバイス、笑顔、さわやか、「この人に話してよかった」と思えるいい感じだった。
思わず名前を見たら「小野さん」という方だった。
その話を近くに住む友人にしたら、「え、その人私の25年前の上司!」ということが判明し、当時はブライダル関係の会社でお仕事されていて、小野さんは理想の上司だったらしい。
コロナで転職され、今のお仕事をされているそうです。できる人はどこでどんな職業につかれても、印象に残るよきお仕事をされる。という話。


【菖蒲】
3つほどしないといけないテーマ、したいことを、自分で考えた。
そのひとつ、講演をするのを復活させようと思った。そして、そう思っていたら、早速することになって、「色彩で改革」というテーマで行った。今、4つほど一緒に仕事をしているビジュアルマーチャンダイジングのデザイナー(大阪出身、小倉在住、京都よーじやの店舗ディスプレイなど手掛ける)の方と、1時間ずつ講演した。
彼は、色の重要性を、現場で一番わかっている人。ビジュアルマーチャンダイジングのアメリカから入って来た理論をベースに、現場的な話を彼がして、私は景観とか、大きな枠組みでの、色彩環境の重要性みたいな話をさせてもらった。
私が今アドバイザー、顧問をしている水間鉄道さんの職員の人たち、貝塚市役所の市職員が対象で、20人ほどに向けて、広い会場で、ゆったりとやらせてもらった。

ふたつ目。自分の健康管理ですね。太りすぎということで、去年からダイエットに取り組んでいて、今も継続してやっている。
ある先生が、「貯筋」せなあかんと。65過ぎたら。「筋肉を貯める」という意味ですね。なので、歩く量を増やすことももちろんですけれども、色々考えて、シュミレーションした結果、今、犬と母の介護のことがあり、仕事も忙しくなっている、さらに、自己管理できないと、自分を責める自分がいる。これを近所の24時間営業の小さなジムに行って自分でやるのは、どう考えても無理だな、ということで、結局パーソナルトレーナーをつけて、女性専用のジム行き始めた。週2回。
私はジムでトレーニングするのは、自分には合わないと思っていたが、実際、5月1日から始めて、何回か行っているけど、面白い。
まずは、全部組成を出したときに、衝撃を受けるほどの肥満度が高かったので、これはヤバイと思って、せっせと貯筋に励みたいと思っている。
人のフォームのことは、よくわかるけれど、自分のフォームもチェックしないといけない、とつくづく思った。自分で思っていたスクワットの正しい形っていうのが、実際全然違っていた。重心の落とし方とか。それを上手にイケメンのお兄ちゃんが指摘してくれるんで、えらい励むことができる(笑)。 しっかりせいぜい励んで、健康的に痩せられたらな、と今思っている。


【紺野】
4月、現場が元に戻り、結果からいうと5月また忙しくなってしまって、まわしきれないほど仕事が来ている。困ったなあという状況で、もしかしたら機械をまた入れないとな、というところまできている。
飯田市は、コロナはちょこちょこ出ているだけで、南信(長野県南部)の方はほとんど出てない。
大阪京都方面の方からすると、びっくりするんじゃないかなと思う。


【白石】
社員の子の、プロデビューの試合を見に行って、思いきり泣いてしまった。彼は娘と同級生で、彼のお母さんは僕と同級生。相手は30歳で、結果的には負けたけれど、もう本当に打たれて打たれて「どつき合い」みたいな感じになって。結局は倒れなかったんですけど、自分の子どもが、ものすごくたたかれているイメージがあって、リングサイドで鼻水たらしながら泣いてしまった。そのなんとも言えなかったですね。

仕事は紺野さんと一緒で、ゴールデンウィークは日曜日だけ休みなだけで、後はもう、緊急事態宣言で、どこも行けないのでほぼ全員が出勤して、ちょっと落ち着いたら連休各自がとったらええかな、という状態。

で、もうひとつは、ホームページのリニューアルが進行中。
うちのホームページは、昔々高校生が、卒業制作かなんかで、作ってくれる、という企画を八幡市でやっていて、それに応募して作ってもらったもの。それから十何年たって、作ってくれた高校生の子が、訪ねてきてくれた。まだあの時のホームページ使ってくれてはったんや、という話になった。今、独立して、ホームページの会社をやってるんです。そして、今回、無償で作らせてもらえませんかと。
移行だけ終わって、細かい調整っていうのはこれから。リモートでやりとりすればいいのだろうが、僕はそっち系が疎いので、訪ねてきてもらって、何回かすり合わせして作っていくという方向で進めている。緊急事態宣言が終わってから、動いて行く予定。


【桜庭】
私も先週PCR検査を受けることになってしまって、まあ生きた心地がしないですね。私の年齢では、重症化している人も結構いるので。私は濃厚接触ではなく、一応対象者ということで、受けてくださいって言われて受けた。何事もなく、もちろん陰性で、よかった。
私たちの場合は、高齢者と接触しているので、当然、万が一のことがあったら、即命に係わるようなリスクを抱えている。今回のことをきっかけに、本当に、十分すぎる以上の対策をうっても、まだ足りないという自覚でいかないと、事業存続どころか、地域に住むこともできないな、と改めて感じた。

で、うちの夫の会社が、大きな工場もあり、うちは今ラインのほういるので、工場にいるんですが、聞いていると、今回のこともあったので、ものすごく対策が徹底している。それでも、たくさんの人がいるので、出てしまうが、その基準に照らし合わせてみると、やっぱり自分が、人ともあまり会わないし、人と会うときは外だし、まあ大丈夫だろうという甘い気持ちが、頭のどこかにあったことを十分に反省した。
これから、しっかりガイドラインも作っていくが、作ったから満足するんじゃなくて、それ以上に、きちんと徹底できるように、改めて思った。
明日で2週間たつので、もう一応自主隔離期間も終わり、何とか無事に皆さんにお会いできてよかったなと思っている。身近にかなりせまってきたので、たぶん皆さんも明日はどうなるかわからない、というところあるかと思うので、くれぐれもお気をつけてお過ごしください。


【蒼天先生】
コロナ関連で言うと、ワクチンの接種日程が決まった。来週18日1回目。次回、皆さんとお会いするときには、ワクチンの接種は終わっている、そんな感じ。
僕の場合は、外出はできるだけ避けているので、大丈夫だと思っている。

先月、僕の発表の中で、「非まじめのすすめ」という本を、皆さんに紹介させていただいた。まだ半分くらいしか実は読んでいない。じっくり読んでいる。久しぶりにいい本と出会った。ぜひ皆さんも読まれたらいいと思う。
当たり前のことが書いてあるが深い。なぜ当たり前なのかというのは非常によくわかる。それともうひとつね、私にとって、ありがたかったのは、色々と考えて、クレイジーだとか色々いって、それで適当な言葉じゃないということで、色々と考えまくってて、やっとたどりついた言葉が「非まじめ」だった。で、そこからその本との出会いがあった。僕が今まで考えていたクレイジーっていう内容が、非まじめの本の中にどんどんと出てくる。だから、僕ちょっと自信をもって、いい気分ですね、できるだけゆっくり読んでいる。といっても1日のうち、1時間か2時間くらいしか読んでない。非常に意義ある1ヶ月、非常にいい気分で過ごすことができた。

 

「わが社の戦略と課題」【墨田さん発表】

【墨田さん発表】
「戦略と課題」年頭の所信ともを絡めながらというところで、あんまり細かい会社の仕事のこと、内容の部分的なことではなく、私が喋りたいなと思うことを喋ります。

今年の年頭の所信では会社のテーマは「不易流行」「常識を捨てて本質を残す」ということと、個人のテーマは「非常識な発想と実践」ということを掲げた。
結論からいくと、私の会社の戦略は、「自分自身がどう生きたいか」、というのを、仕事を通じて実践するならどうするのか、というところ。
究極的には、「人が生み出す安心と期待」という風に位置づけている。これが「戦略」です。
なので、ベースは「かかりつけ工務店」だが、単なるキャッチフレーズではなくて、自分自身の生き方を仕事の中で言葉にするなら、僕はこういうことだという風にしている。

「かかりつけ」、会社の代表である私が、自分の生き方とするなら、人に役に立こと、人から頼ってもらえるというところは、非常に自分の生き甲斐であると思う。今現在、そういうことのベースは少しできているとは思っている。

「非常識な発想と実践」、そこが大きい「課題」の部分かなと思う。人の役に立つような仕事をするけども、自分が面白いからとか、自分発信みたいなことは今のところすごく少ないなーと。

近年、受注の内容や、その経緯を自分なりに振り返ってみると、リフォームや修理が多い。
個人のお客さん以外に、法人のお客さんも非常に多くなってきている。
特別な営業も、発信も、何もしていないにも関わらず、受注をいただくのは、口コミとかご紹介があるからで、結局突き詰めていったら、「あんたやし」とか「安心できるし」とかいうことで、「人」という部分で、きっかけをいただいているのは間違いないなと思っている。
これもずっと以前から、紐解いていけば、会社の創業であるおじいさんの時からあまり変わってないかなとは思う。そこが一番のポイントかなーという気がするし、特にここ2、3年特にそう感じる。コロナになってから特に。
コロナになってからは、大規模な受注は少し少なくなったが、件数としては、非常に増えてきている。

「不易流行」に関連する話。
ここ最近、「ウッドショック」という現象が起こっている。簡単に言うと木材が全然足りない、輸入材が入ってこないということ。コロナになって、アメリカでは都市から郊外へ出ていく人が増加して、住宅の需要が増大している。
さらに、世界的にも巣ごもりの重要というのが増えて、コンテナによる流通っていうのがすごく増えて、コンテナ不足になっている。
もう一つ、日本の木材の品質基準というのが、世界の他の国に比べたら非常に厳しく、日本が買い負けている。なので、北米材が入りにくくなってきている。ローコスト住宅は、大方北米材を使用しているので、木材が足りず、6月くらいから、着工できない新築住宅が増えてきていると聞いている。
日本の国産木材の自給率は低く、輸入材に頼ってきたから、量はあるけれども、業界従事者が少ない。
自然の循環に合わせた仕組みを何十年もかけて作っていかないと、人の都合で急に簡単に増産できないので、私からすると、自然に逆らって、利益を優先してきたツケじゃないのかな、と思ったりしている。
私自身は17年ぐらい、地産地消を念頭に、木材はある程度、県産とか国産を使うように取り組んでおり、林業家さんや製材所さんのルートがあり、規模も小さいので、仕事にはほぼ影響を受けない。
「不易流行」という側面からみると、自然に逆らってまで木材を求めることに対し、ずっと疑問を感じていたので、自分が間違いないと思ってやってきたことは、やっぱり正しかったし、これからもその視点を見失ってはいけないと思う。

そして、自分自身、会社を経営している自分自身がやりたいことは、以前少し触れたことのある、会社の環境改善、リフォーム。とにかく自分も社員も楽しく仕事ができる職場を作りたい。

それから、こんなことがほんまにできるのか? と思いつつ、「ノーメンテナンスの最小の家」というものを作れないだろうか? と考えています。

それからもう一つは、コミュニケーションに今の3倍手間暇をかけたい。それが時間なのか、回数なのか、または濃度なのか、どうやったら実現できるのかっていうのは考えないといけないが。

やりたいこと、課題、に向き合うにあたり、ますやるべきは、自分を磨くこと。自分、社員、それぞれ個人の魅力を、きちっとどんどん高めていこうということ。
そして、人のお世話をすること。自分のことだけではなく、自分ができていなくても、人のお世話、今まで自分が先輩の方からしてきて頂いた事を、次の人に送るというような感じ。
そうすることで、また自分が磨かれていくのでは、と思っている。

それから、もっと好き放題やると。
自分では、最近やっと好き放題しだした感じがしているが、もっともっと好き放題やろうと思う。

それから発信するということ。
自分は何者なのか、何ができるのか、表現力を高めて外に発信することは大事かなと思う。

そしてムラをなくすということ。
以前話したことがあるが、いい時はいいんですけど悪い時は悪いみたいなのがどうしてもある。どうしてもムラが多い。課題です。

ちょっととりとめがないんですけれども、そんなところです。


【桜庭】
一番気になった「最小メンテナンスの家」っていうのは、具体的にどういうものなのでしょうか?

【墨田】
コンテナハウスとかってあるじゃないですか。鉄道で運ばれるコンテナ、ありますね。そういう感じの現場ハウスみたいな感じをイメージしていただけたら。
もうそれ一つを置いたら全部完結するというような。
それを木材じゃなくって、全部ステンレスで作る。腐食せず、耐久性が高く、構造としてメンテナンスがいらない。意匠的な部分は別として、あくまで中心部分の、コアになる部分の耐久性が高いというようなものをイメージしている。

【桜庭】
なぜそういう物を作りたいと思ったんですか?

【墨田】
メンテナンスは、できればない方がいいなとは思うので、ただただそれだけですね。メンテナンスが少なくて済む方がいい。
木造住宅とかでも、木材が悪いわけではなくて、メンテナンスがどうしても気が付かない部分にたくさん出てくるとかっていうのは、できる限り減らしたほうがいいなと思っているので。
「小さい家」というのは、大きい家は今まで住んでみて、無駄が多いなと感じるので、必要最小限というのもありやなと思っている。

【蒼天先生】
メンテナンスフリーの家は、非常に面白いと思うね。
しかしね、ちょっと欲張りすぎましたなぁ。何から優先順位つけてやる?

【墨田】
ぶっちゃけさっきの「最小メンテナンスの家」のような、商品開発的なものは、最後です。もうそれは別にいいかも。
「コミュニケーションに手間暇かける」というところが1番ですね。

【蒼天先生】
今度の新しい社屋に、コミュニケーションできるスペースは作る?

【墨田】
はい。
社屋の中のスペースで言えば、6、7人。それとは別に、社屋の工場の広いスペースがあって、そこは20~30人集まれるような場所があります。

【蒼天先生】
なるほど。
僕も、墨田さんが1番にやるべきは、コミュニケーションだと思う。

社内や、お客さんとのコミュニケーションにとどまらず、ね。
工務店の場合は、いろんな外注先がある。そこと、単に仕事を依頼するというコミュニケーションだけではなく、「墨田イズム」を浸透させていくというような工夫が必要なんじゃないかな。
そして、そういうことをやろうと思ったら、ついてきてもらうリーダーシップが必要で、そのリーダーシップをどういう形で涵養を図るかというね。僕にはそこに、墨田さんの大事な課題のひとつが見えてくる。
そうなったら、その課題解決のためにはどうしようか。具体的に言えば、コミュニケーションの時間を増やす、リーダーシップの涵養を図るということであればね、あえて言えば、今の墨田さんの仕事のパターンを変えてしまわなきゃならん。
だからそのへんの仕事のパターンをどう変えるか?そのへんも含めてね、どこまで考えているかというのを聞いてみたい。

一般的に、業種とかこだわらずに、素直なね。

たとえば、「非まじめすすめ」に、こんな一節があった。
「スポーツマン精神に則った競争は、企業間競争でできひんか」っていう問題提起。
前々から僕が考えてたことやけども、要はお金が入ってくるとややこしいね、いろんな競争・利害関係が入ってくるから、
そういう利害関係を全部取っ払って、「人と人」という感じで、内面を磨くとすれば、墨田さん自身を磨くのと、それから社員とのコミュニケーションを図るというのと、外注関係とのコミュニケーションを図るというね。

僕の家の周辺で、今いっぱい家を建てていて、時々声が聞こえてくるのが、ものすごくレベルが低い。元請けの社長が来た時だけ、態度が豹変して急に言葉遣いが変わったりするけれども、そういう姿をいっぱい見ている。墨田さんのところは、そんなことはないと思うけれど、あえて言うなら、そういうところで差をつけたら面白いんじゃないかな、と思う。

今、墨田さんに感じるのは、忙しすぎるんちゃうかな、どうやろ?
相変わらずそこの部分がね、解決できていない感じがする。
そこのところにメスを入れないと、全部解決できないと思う。

だからあえて戦略といえば、「自分の一日の生活パターンを改善する」。
生活パターンというか、受注パターンでもいいかもしれないけど。
そういう、1番の根っこのところからメスを入れていかないと。根っこの部分で具体的に手当てを考えないと、次のステップに移れないんじゃないかと。

「あれもこれもやりたい」という風呂敷を広げる前に、自身のことをもう少し見直してみるのはどうだろう? そんな風に思ったのだが、いかがなものか?

【墨田】
おっしゃるとおりですね。
去年、そして今年に入ってからも、なるべく余裕を持てるように、仕事のやり方を変えないとと思ってできるだけ任せるようにしていたんですけど、気がついたら、任せられる以上に仕事が入ってきて、自分もやらねばと思って、結局あまり変わらないような仕事の仕方になってきているなと思います。

【蒼天先生】
僕昔、メーカーに勤めていたけどね。
営業からいろいろ受注がある。
現場での製造能力・キャパが決まってる。
納期がある。
それから物によって生産工程が違う。
その中でどう調整してね、うまくベストな組み合わせで受注を受けて、そしていい結果を残せるか、というね。
僕が勤めていたころはコンピューターがなかった時やから、それを全部手作業でやってはった。

やはりね、ベースは何かというとね、作る方。
受注を中心に優先するんじゃなくて、作る側を優先にして、受注を組み立てるというかな。
そういうやり方でやってはりましたわ。当時は。
今は変わったかもしれないけど。今はコンピューターでいくらでも組み合わせ・シミュレーションできるからね。

そういうものの発想というかな。
どっちを優先して、何をコアにして受注と生産との組み合わせ(を考えるか)。
工務店は生産っていうたら大変や。外注先が多いから。
外注先は事情が全部違うわけやからね。レベルも違うし。
そのへんでどう組み合わせていくかっていうね。
まずそのへんをきちっと固めて。まずそこが先決やろね。
そのためには固めるための時間が必要になってくる。その時間は自分で捻出しないとどうしようもないから。
だからそのへんで、今までのやり方を踏襲していたら、気持ちだけではすべてまた元の木阿弥に戻ってしまうから。そこの部分にメスを入れないと。
結局、毎回同じこと・毎年同じことを言うてることになるから。
もちろん仕事の内容は少しずつ変わってきたとしてもね。
ちょっとそこが僕は気になった。

要は一言で言えば、墨田さん、外に出て仕事することを減らすということですわ。
デスクの前に一日何時間座って、そういことの仕事に打ち込めるか。その時間を何時間捻出するか。
残った時間で、具体的に受注をこなす。当面はね。
それで一つのシステム・考え方が決まってしまったら、それで流せるわけやから。

それはあなたパソコンが達者やから、そのへんで一つのシステム作ってしまったら簡単に僕はできると思う。
インプットしたら自動的にアウトプットが出るような、そんなシステムを構築せなあかんのちゃうかな。ぼちぼち。と僕は思いますが。
だから、墨田さんの時間、結構ロスがあると思う。
ひょっとしたら3分の1ぐらいロスをなくせるかもしれん。

【白石】
これ、僕にも言われてるんかな、と思って聞いてたんですけど。
僕は今、コロナだから、時間をすごく詰めて使ってしまう。
順調だった時には、いろいろ仕事選別させてもらってきたが、いつまでコロナが続くかわからない、ということで、無理に時間を作って、本来なら取らなくていいような時間を使ったりしている。
仕事がどうのこうのというよりも、精神的に自分が高い位置にいかなあかんとか。
これをしないといけない、というのを、まだここに行く必要がない状態の時に、今コロナだからやっとかなあかん、みたいな感じに、今僕、一日少しロスが多いよな、ということを言われたことが、まさにぐさっと来たんですけど。
どうでしょう?

【蒼天先生】
まずね、コロナということをね、考えないことが1番大事。
だからね、コロナで受注が減ったら、減ったままにしておくということ。
受注が減ったから今までやってなかった、言葉は悪いけど「しょうもない仕事」を受注している、それが諸悪の根源を担っていると思うから。
だから、コロナであっても、従来受注していなかったものは、操業・稼働率がどれだけ下がってもね、今までのレベルの仕事しか受注しないと言う、そのくらいの大胆さが必要じゃないかな。
あなた自身が、それぐらいの精神力を持たなければならないということやな。
受注が減ったから、従来注文受けてへんかったしょうもない注文も受けようか、っていう、そういう気持ちが少しでもあったら、相変わらずそういう状態が続くと思うから。

これ逆のケースなんやけどね。古い話で恐縮だけれども。
長野の冬季のオリンピックあったでしょ。だいぶ前ですが。
その時にね、長野の最大手のタクシー会社がね、オリンピックの特需は一切受けなかった。
いっぱいあったんやけども。他のタクシー会社は特需を取りに行った。美味しい話やからね。
もちろんそれで売上は拡大した。ところが、他のタクシー会社の従来の固定客はね、オリンピックの客の方に目が向いてしまたから、お留守になった。それを長野の最大手のタクシー会社が全部吸収して。で、オリンピックが終わってしまったら、他の会社は大変なことになった。

要は、コロナであるとかオリンピックであるとか、需要が減るとか増えるとか、逆のケースかも知れないけども、従来のやってるコアの部分は絶対崩したらいけないと思うし、そこがぐらついたら会社全体がぐらつくことになると思うし。コアの部分がぐらいついたら影響はずっと続くと思うし、そこの部分は一番注意しなければならないことちゃうかなと。
僕はそのように思いますが。どうでしょうか。

【白石】
だと思います。

【紺野】
私もコロナで売上が減っている時に、いろいろあれやったほうがいいんじゃじない、これやったほうがいいんじゃない、と言われたんですけれども、それはやめましょうと。
今少なかったら、少なかった時に、やるべきことをやりましょうということで。
従業員さんに思い切って大型自動二輪を取りに行かせたとか。そんなことをやったり。
普段なら絶対できないことに挑戦してもらった。
今ふたりとも去年のうちに取って、私のハーレー、週末乗ってますけども、みんな楽しい楽しいと言って乗ってます。なので、そうしているとまた景気が戻ってくるんで、その時に叶えたかった夢をもう叶えちゃってると。
そういうことをやってましたね。
なのでそこら中に手は出さないようにして、今やれることとかチャンスとかを今やれるのかどうなのかを考えて、ちょっと思い切ってやってみると。
ですから、いつものコアを崩さずに、余計なところには手を出さないと。
縮こまったら縮こまったなりにやってました。

【白石】
先生例えばステップアップ、今回こんなときですから、ステップアップの階段と、落とし穴ってあると思うんですけど、そこってどうなんですかね?
個人さんでやってはる人と、下に何人か抱えている人とは、見え方が少し違うのかもしれないですけど。

【蒼天先生】
要はね、自分の能力を超えて、規模を拡大した企業は大変です。
例えば、休業補償なんかでね、ガヤガヤ言うてはる人は、ほとんどが多店舗展開しておられる人。自分の甲斐性以上にね、たくさん店舗を持って売上を増やそうというね。
そういう人が大きなダメージを受けている。

要はこういう時期は自分の実力を見直す時やと。ある意味、ステップアップの時期やなということ。
ある意味では、こういう時期もあるかもしれないからということで、売上が減ってもちゃんと社員に給料払えるだけの蓄えをね、日頃から少しずつしておくということ。それも一つのリスク管理ですから。
それができているかできていないかということも差があるけれども。

ある程度規模の大きい企業が、こういう事態が起こっても、あんまりごちゃごちゃ言わないのはね、日頃から、ある程度そういうリスク管理ができているから。
僕は、かつてそういう仕事をやっていて、当時は景気は循環して、良くなったり悪くなったりしたので、景気がよくなりかけた時に、悪くなった時のことを考えるということでね、いろんな計画をしたりしてぃた。

だからやはりもう少し視点を長期に見て考えるということも必要だし、そこのところで中小企業の場合は、そういう体制と言うかな、長期的な視点というものがない企業が多いから、今大変な状況が生まれている、
前のリーマンショックの時も、日頃からリスク管理がちゃんとできてるところは、当時受注がは2割とか3割分ぐらいまでに減っても、それでももちこたえたところはあったし。
持ちこたえたところというのは、今までずっと白石さんところがやっておられたやり方です。定時で帰って、それでも採算が合う企業を作っておく。
やはりそこですわ。

日ごろのリスク管理は大切。常にそう言っていても、その場にならないとしないところが多い。皆さん目先の美味しいものを追い求めるから。
だから僕はこの研究会でも売上がなんぼやったて聞かないのはそこ。目先なんてどうでもいいと思っているから。その姿勢ですわ。
そういうリスク管理ができていたら、精神的な力もね、蓄えられるから。

もうまもなく1年ぐらい辛抱したら、普通の状態に戻るかもしれない。
だから余計なことをしないということが一番大事だと思う。

【白石】
墨田さん、コミュニケーションの工夫、何かありますか?

【墨田】
外注する業者さんは、だいたい同じメンバーで、もちろん変な業者さんはいない。
でも、僕が理想だと考えている、お客さんとの関係性、業者さんとの関係性については、あまり話したことがないので、1度じっくり伝えたいなと思っている。
今は、仕事を発注する側と、やってもらう協力業者、という立場上の関係でしかない部分が多いので、そこが変われば、もっと変わってくる部分もあるはず。
それこそ、1社1社まわって、僕の思いをしゃべりたいなと思っている。
社員に対してもそう。意外と黙って雰囲気で伝わってるかな、という感じになってしまうし、それはよくないなと。

【蒼天先生】
新しい社屋の、集まれるスペースに、月に1回ぐらいね、主要な業者を集めて、藤田イズムの浸透を図る1日にしたらどうかな。
とにかく徹底的にあなたの考え方・イズムを伝えて、疑問に思っていることは全部答えて、外注先との絆というかな、そういうものをきちっと築くこと。
これから月に1回ぐらい、定期的に、この例会やってることとね、やるのも一つの手かなと。
どうですか?

【墨田】
そのへんはぜひ、します。

【黄金】
墨田くんあのね。めっちゃ違和感あるねん、さっきの「戦略」の話で。
なんやろ……。気持ち悪いというか。この感覚はなんかわからへんのやけども。
最近は、僕自身が「戦略」という言葉は苦手になってきているし。なんちゅうのかな……。
あえて「戦略」と言われて、無理に「戦略」を作ったんちゃうかな、という感じもする。

墨田工務店は、お客さんに選ばれるために、価格競争したり、住宅をどんどん作っていく会社じゃない。国産材の流通ネットワークを作って、ちゃんとやっているし、全然それでいいやん。
「墨田イズム」という話もあったけれど、変に「墨田イズム」の方程式を紙に書いて「こうやったらうまくいく」みたいなことではなくて。

墨田工務店で働きたいな、という社員とか、墨田工務店とお付き合いしたいな、という仕入先・外注先があれば、会社って成り立っていくと思う。

墨田くんに、「戦略」という言葉が似合わへんというか、「戦略」と言われてそのために作文するということが、なんか違和感かな。
墨田くんの思いが、今の発表の「戦略」にきちっと反映されているかと言うと、微妙なところ。あんまりガチガチに縛られへんほうがいいんちゃうかなと思ったりとか。
そんな感じを僕は持ったので。

あんまり「戦略」を上段に構えずに。
シンプルに、お客さんに選んでもらうということが「戦略」なんだろうし、そのためにコミュニケーションをとったりとか。
ノーメンテの住宅というのは、墨田くんの夢・願望やろうしね。それはそれで大切なことやから。
やっぱり「墨田イズム」、墨田工務店が持っているカラーをじわじわじわじわ広げていくために、どういう風に考えていく? みたいなのが戦略なんちゃう?

【蒼天先生】
それ正解やと思うよ。
僕はあえてね、なぜ「戦略」という言葉を使ったかということ。
実を言えば、この背景を皆さんにお話してない。
「戦略」という言葉について、今ここで話します。
まずはこの本。「企業戦略論」H.I.アンゾフ。
僕はこの本をベースに、35歳くらいの時、勤めていた会社の「戦略」を作った。
いかにマーケットの伸びを上回るものを作るか、という拡大戦略。これは世界のモデルになった本。
これが最初の「戦略」、拡大戦略。

それからその次はこの本。「マネジメント」ピーター・F・ドラッカー
社会的責任を果たすとか、会社の方針に従って社員を育てるとか、自分の考え方を浸透させるとか。ちょっと進化してきた。
拡大論については大きく述べられておらず、ここで中心になってるのは「理念」。
「理念をいかに戦略的に展開して、企業の繁栄につなげるか」というがこの時代。

それから次に「戦略」として皆さんに考えてほしいのはこの本。
「7つの習慣」スティーブン・R・コヴィー
軸足が、企業から人に変わった。
これは非常にいい本です。

大体これが戦略の流れです。

じゃあ「戦略」とは今何か、というとね、基本的に、「考え方」なんですよ。
企業を大きくしようとかしないとか、そういう問題じゃなくて、「考え方」。
自分の考え方をきちっと固めて、それをコアにして、そして自分の考え方でいかに良い企業にするか。
良い企業というのはひとりひとり考え方が違うかもしれない。

大きな企業にするのが良い企業だと思う人もいるかも知れないし、あるいは社員に一番喜んでもらう企業にするのが良い企業にするということかもしれないし。
それはもう人によって違うと。

あえて言わなかったんやけど、ここで言う「戦略」というのは、考え方を述べてもらうということ。僕の戦略に対する考え方はものすごくはっきりしている。
「競争しないことが戦略」
僕は、10年前ぐらいから徹底していた。

要は競争の渦中・マーケットの渦中に入っていくんじゃなくて、自分しかできないマーケットを作れば、これは独占できるわけだから。
とにかく「競争しないことが戦略」
いかに競争しなくていい企業を作るか。これが一番大事だと思っている。
だから桜庭さんが今の仕事を始めようとした時に、めちゃくちゃ賛成したのはそれ。独占できるという。その地域でね。

そういうことなので、あえて戦略、戦術というのは考えなくてもよい。それは、古い昔の話。
今はもう、自分の考え方を固める。自分の考え方を固め、それを企業のコアにして、どう企業を発展させるか、ということ。自分の考え方が揺れていたら全然話にならない。

だから「戦略」というのは、自分の考え方を述べてもらったらよい。
中小企業の場合は、トップの考え方は企業の考え方にブレイクダウンされるから、個人の考え方を聴くことで、会社のあり方が、形としては出来上がるのではないかと思っていた。

墨田さんの場合は、工務店という企業形態、元請けがあって、家ができていくという流れがある。そこで大事なことは、墨田さんには、専制君主になってもらわなくてはならないということ。権力やお金に物を言わせるのではなく、人柄とか、人対人の絆によって、墨田さんに魅力を感じてついてくるという。
それが継続の秘訣だから、コミュニケーションが大切、ということになる。

ちょっと話は変わるけれども、山吹さんのところが非常に繁栄しているのは、お客さんとのコミュニケーションがものすごくうまいから。
僕はまだ店行ったことがわからないけれども、むちゃくちゃうまいと思う。
何かそういうね、突出したものを持っていれば、何が起こっても怖くないし。
ということになるんじゃないかな、と思います。

墨田さんところは社屋を作るのを契機にしてね、そういう機会を設けられたらどうかなと思いますが。

【墨田】
ありがとうございます。

【菖蒲】
今回の発表は、「戦略」という言葉だけにとらわれずに、自分にしかできないことを強みに、本質的にそれを自分が強固にしていく考え方っていうのを発表するのかと改めて思った次第。
私なんか人と同じ土俵で勝負するのは前から嫌いやったから、自分にしかできないことしかしていないけど(笑)。 確かにそれならば、「揺るがない」と言うか、何があってもあんまり変わらないと言うか。
私、もともと土壇場とか、困窮する時の状況に強い人間なので、なんでかなと思っていたらそういうことやったんかなとふと思った。
皆さんそれぞれの事業の規模とかそういったことがあるかと思うんですけれども、皆さんが経営者であって、自分自身の考え方っていうのを強固にしていくことでしか、会社の安定と発展みたいなものってないのかなと。
私はそんな大きなものを抱えていないので、勝手なことを言いますけれども(笑)。 

【白石】
ありがとうございました。
先生これは掘り下げなしで、ある程度の時を経てから経過報告ということでいいんでしょうか。

【蒼天先生】
そうですね。3ヶ月後ぐらいに。
まだ進行中です、でもいいし。
要はこの際、自分の考え方を固めてもらうというかな。
何が起こっても絶対動かない、微動だにしない考え方をきちっとこの際固めてもらうというのが、今日からのシリーズの目的ですから。

 

「わが社の戦略と課題」【黄金さん発表】

【黄金さん発表】
「戦略と課題」ということで。
コロナについては、確かに当初業績にもかなりの影響が出たが、現在はそこそこ戻ってきている。社内で「コロナは関係ないよ」という話もしている。
先生もさっきおっしゃっていたが、本質的な考え方、ビジネス、そういう部分については時間があったので、しっかりと考えることができている。

今日の発表については、「戦略」やから何をどういう風に売っていくとか、マーケティングの話だと思っていて、そのことについてはある程度話をしようと思っていた。

本質的なことについては、うちの会社すなわち私自身がやらないといけないことは、人と向き合うこと。まずは社員のみんなと向き合うということ。根底にある考え方を疑うというか、ゼロにして物事を見るということ。

かつて私は、「世の中の流れ、時代の変化というものがあり、それに対して、世の中に必要とされるもの、お客様が必要とするものは、変化していく。その必要なものを、お客様に販売していくのが私の仕事であり、正しいことである」
そういう考え方に基づいて、仕事をしていた。

単純にいうと、コピー機が出てきたら、コピー機を、ファクスが出てきたらファクスを、世の中が成長していく中で、そういうものをお客様に販売してきた。答えはいつも、時代にあり、その時代をみて、必要とされるものを販売する。そういう一つの流れがあり、それが世の中でいう「正しいこと」だった。誰も異論を唱えることなどなかった。

時代の変化の中で、こうすればお客様が喜んでくださる、ということをやっていけば、企業は成長する、と思っていた。
特に、高度経済成長期、好景気の時代は、お客様の数を増やす、売る商品を増やす、ということをしていけばいい。そのためには社員を増やさなければならない。
そんなこと「普通に」考えればわかることで、それが正しいことだと信じて疑わなかったし、うちのビジネスも、当然のことながら、どんどん事業の幅を広げ、人を増やし、仕入先も協力業者も増えてきた。拡大がすべてだった。

今でこそ、オンラインショップがあるけれど、以前は、人と人が向き合う中で、モノを売るというビジネスをやってきた。たくさんのものを売りに行けと。ところが、リーマンショック以降、人口が減りだしてから、それは成り立たなくなった。それは誰もがわかっているんだけれども、まだそれにしがみついている。
日本全体を見ても、そうだと思うが、過去の成功体験を捨てられない。ダメだとわかっているのに、高度経済成長時代から続く、多くの制度、商習慣、時代錯誤なルールを変えようとせず頑張っている。そうなると、疲弊してくるのが当たり前。
人を「コスト」という呼び方をし出したのは、本当に大きな大きなダメなとこだと思っている。
そういう中、自分もですね、格好悪い話だけれど、ある意味教科書通りにやってきた。理路整然と、理論的に、「戦略とはかくあるべき」「戦術とはこういうこと」、そういうものを正しいと信じてやってきた。
そして、教科書そのものが間違っているなんて、自分で意識したことがなかった。
でも、今思うのが、正しくなんてないじゃん。ビジネスの中で正しいってどういうことかというと、お客様に選ばれ続けることが正しいことなんだろうな、っていうことに、まあ気が付いたというか。今頃気が付いて、今いろんな事業の見直しをしている。

それと、最初にも触れたけれど、やっぱり人が大切だよねと。
以前は、みんなにとって、1番大切なのは報酬、だと思っていた。そして、人の本当の気持ちみたいなものを汲むという努力が、自分の中では足らなかった。
それは、自分がビジネスの勉強をし、それによって正しいと信じることをし、結果会社が潤って、それを報酬として支払うことができる、それが良いことだ、正しいことだと、なんの疑いもなくやってきていたから。
コロナの前から、なんとなく、それっておかしいなと、気づいてきた。そしてわかってきた。

ということで、「戦略」は、人にフォーカスして、社員みんなの想いもしっかり理解をして、一緒にやっていくということ。

自分たちの持っている武器をうまく利用して、しっかりやっていこう、そんな想いを社員と共有している。
僕がその中で注力すべきは、売ること、売り方を考えることよりも、社員一人ひとりに向き合って、彼らの人生を、自分のできる範囲でサポートしてやったり、そういうことだと感じている。
「人にフォーカスしていく」という「戦略」に対し、「課題」としては、本当の意味での思いやりを持つこととか、本当の意味で、人の気持ちを理解しようと努力すること。今からでも遅くないから、勉強、というか「ちゃんと感じる」というか、そういうことをしていきたいと思っている。

以前、桜庭さんから言われたこと。僕の発表の後、「社員さんをコマのように扱ってませんか?」
めっちゃショックやった。
全否定して、そのときは「そんなことはないです」と言った。そんなことはあり得ないと思っていた。
でも、今から思うと、よくよく考えたら、報酬だけでみんなに応えようとしていた自分がいたのだから、それはもう明らかにコマ扱いしていると言われてもしょうがないのかなと。そのときの自分の教科書のどこかに書いてあったのか知らんけど、その時はそれが「正しい」と書いてあったから。

だから最近は、「正しい」ということの解釈を変えている。世の中に、正しいことなんてない。昔から言われているけど、今も起こっている戦争も、それぞれの国が正しいと思って戦争しているわけだから、理屈なんてない。
僕は、大事なことは、まず自分の考えから、固定観念を捨てると。自分の思い込みが、自分の当たり前になっている。それを全部捨て去らないといけないなと。

そう考えると、まだまだ未熟なところばっかりで、この研究会で、皆さんからいろいろ話を聞かせていただくことは、自分にとって、プラスになっているし、自分の考えが、いかに浅いかということを感じるので、人と向き合うことの大切さを思います。

それから「戦略」で、業績的な話をすると、さっき蒼天先生もおっしゃったように、「戦わない」ということ。「営業しない商社」を目指してやっていきたいと考える。こちらから売りに行くのではなくて、お客さんの方から声をかけてもらえるような形。
モノを作るということについては、精通していないが、モノを使っていただくお客さんに対して、しっかりサポートしたり、悩み事を解決する。
うちにはICT(「Information and Communication Technology」(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)の略で、意味は「情報通信技術」)という強い武器がある。こちらから訪問して武器を使うのではなくて、お客さんのほうから来てもらえるような、そんなことを考えていきたいと今思っている。


【白石】
ありがとうございます。銀河さんどうぞ。

【銀河】
短い時間にいっぱい喋らはるので(笑)

【黄金】
早口が僕の悪い癖やねん(笑)ゆっくり喋りゃええのにな。

【銀河】
おっしゃっていることがすべて、その通りの事ばっかりでした。
昔の価値観とか思い込み、ですね。私自身含め、自分でこうやな、って、新しい発見や気づきがあって、はっとして、あ、こうやな、って思うんですよ。でも気づいたら、それも思い込みだった……。よくある。
だから、気づき続けること、自分をリセットし続けることが大事で、
1回くらい「はっ!」となったくらいで「私わかった!」と思ってしまってはいけない。テンション上げてはいけない。そういうことだと思う。

黄金さんのお話に、引っかかるところなく共感させていただいた。
黄金さんのような大先輩が、「自分はまだまだ未熟で」と、さらっとおっしゃるところに、私ウルっとくみたいな(笑)。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の映像が浮かびました。

【黄金】
あの、この前の議事録もしっかり読ませてもらってね、すごく振り返るものがあった。
自分の話した言葉って、自分の記憶の中に無いときが結構ある。
いいこと言ってるなあ、これ誰が言った?あ、俺が言ってる!みたいなことが結構あって、そういう面で言うとあの議事録はありがたいし、ああいうところで振り返ると、なんか、こういうこと言ってくれてはったんやなぁと思うしね。

なんか、さっきの話で、「気づき」が「あ!いいもん見つけた!宝物みつけた!」って思ってるけど、それがまた思い込みになってるっていう話、まさにその通りで、だから、そうならないようにね(気を付けるんだけど)、そうなる人間にもう自分自身が作られてる、なってる、っていうのがわかるのでね、だから常に疑うというか、ゼロに、リセットしようリセットしよう、って心がけてることなので。でもできないねん、これ(笑)
 でも本当にあの、議事録が素晴らしくて、自分の振り返り、自分の言ってる言葉に責任持たなきゃいかんってつくづく感じるので、いつもありがとうございます。


スミマセン。嬉しいのでついつい、文字起こししていただいたまま、ほとんど触らずに掲載させていただきました。お釈迦様ラブですが、お釈迦様ではないので、ときどきほめていただけると、煩悩が喜び、次号への活力になります。


【水島】
なんか、解脱しはったんかなと(笑)
先生が言われている「戦わない」というスタンスが凄く出ているのかなという気がします。昔、黄金さんは、対立する、論破する、言い負かす、バトルする、マウントの取り合い、みたいな、そういう印象がありました。
社員さんに対してもそうだし、研究会でも誰かに言われても「いや、違うねん!」って反論する感じがあったんですけど、今はそうじゃない、内省的というか、また、内省ばかりではあかん、っていうところまで昇っていってはるな、って偉そうなこと言いますけど(笑)。
黄金さんのその変化に対して、社員さんとかご家族の反応はどうなんでしょうか?

【黄金】
あのー、社員みんなの前で喋ることは結構多くて、正直、ええ格好しているわけではないけれども、それなりに勉強もしているし、皆の前では、教えてやらなあかんというか、しっかりした話をしなきゃいけないなということで、まだまだ君臨している感じはあるのかなと。
自分の事を、いい意味でリスペクトしてくれているとは思うけれども、でもどこかに僕の指示を待っている感じみたいなことがね、一部まだある。
そこは自ら近づいて行きたいところだけど、近づいて行って相手が緊張してしまうとまたあかんので、その辺の振る舞いはちょっとね、徐々にね、ひとりひとりそういうふうな会話を増やすようなことはやってます。

家庭においては、コロナ禍で家で食事をすることが多いです。娘と家内と3人で住んでいるので、女性ばかりの中で、自分がターゲットになるのね(笑)。ぼろかす言われてるんやけど、以前は言われると反応する、そこまで言わんでええやろ!って。それがね、最近耐えられるようになってきて(笑) 正論ぶってああだこうだ言っても意味ない。みんなと仲良くすることのほうがずっと価値があるんで。 ほんまに意見を求められたら言うけれども、女性二人の会話についていけないことがあるので、そこは聞き流している感じはあります。聴く努力はやっています。でもそれで、このゴールデンウィークもどこへも行かなかったけれども、家族でまあまあ仲良く、会話しながら過ごせたので、ああよかったなあと思っています。答えになってへんかもわからへんけど(笑)

【水島】
いやいや、素晴らしいですね。うち最近喧嘩よくするんで(笑)、勉強になります。ありがとうございます。

【山吹】
今のお話聞いて、うちの主人がこの会に入ってたら会社も解散しなかったんじゃないかと思った。うちの人は戻るということをしない。いまだに自分の主張は正しい、世間の方が間違えてる、っていうので来てます。 何を基準にもの考えているのかなと思う。
だから、黄金さんがあるときコロっと変わられたという原因が何やったんやろというのが聞きたいですわ。
うちの息子はJC(青年会議所)に入っていて、黄金さんもやっておられたと聞いているし、そういう下積みもあるのでしょうか?

【黄金】
JCバリバリやってましたで(笑)。
でもJCが、というよりも……。僕自身は先代が急逝して社長になった。それまでは専務という立場だった。自分がトップになった時、まずそれが一番の大きな変化。環境が人を変えるっていうことかなと。
全部自分がやっていかなくてはならない。それと、次はお前が社長やという既定路線もあり、逃げるわけにはいかなくて。
それまで、仕事は営業で、お金のことは何もしてなくて、社長になってから初めて借金がいくらあるとかわかったぐらいで、全然大した人間でもなかった。
ただ、役割としてしっかりやらなあかんなと。そういう中で、さっき言ったような、自分で勉強した。ただ、その勉強の仕方がまずかったのかな。これから成長していけるような時代で、 拡大路線。上場が流行っていて、拡大が正義みたいなところがあって。そこで学んだことがベースにあり、自分の理屈が正しい、自分の学んだことが正しい、その通り人を動かしたら会社はよくなる、業績を上げてそれを社員に還元することが幸せなんだと。だからまず業績。人の幸せよりも業績。それは絶対に間違いないという思い込みでずっとやっていた。多忙で、考える時間を持たず、思考が浅かった。

コロナ禍で考える時間ができて、本質的なことをしっかり考えるということと、研究会で皆さんの話を聞く中で、本当にすっと自分の中に入ってくるようになったので、自分も変われたかなと。
ある日突然変わったのではなくて、ずっと前から自分の中でなんか違和感あったんだろうなと。理路整然と喋って論破するみたいに思われていたけど、自分の芯になるものがない、弱い人間だから吠えていた、ということ。
自分の本質的な優しさであったりとか、そういう部分を出していかないとね、もう60も超えたし、しんどいんでね。素の自分で勝負しようというか、おもしろく生きようというか、楽しく生きていきたいんでね。そういう感じで、重たかった舵がコロナでやっとグ~ッと動き出したかなと。

【緑山】
奥さんとお嬢さんと一緒に住んでおられて、仲良くされてるのが伝わってきました。
ここ1~2年で黄金さんは変わってこられた。それは家庭でうまくされてる影響なんかなあとも思いつつ、会社の社員さんとは仲良くされているんですか? どのぐらいコミュニケーションしてたりとか、社員さんとは仲良くされているんですか?

【黄金】
うちは車で通勤する者が多いので、以前から飲みに行くことはないです。ただ、3ヶ月に1回の経営計画の発表の日には懇親会をしていた。それから、新しい人が入ってきた時の歓迎会とか。それがみんなのガス抜きの機会になっていた。あと、これも3ヶ月に1回程度、個人面談をして、いろいろ話をしている、ということもある。
あとは、経営計画について、目標とかやり方とか組織を任せるようにしている。自分の意に沿わない計画が上がってくる。以前は、それを却下していた。まだ無理やと。それを今は我慢してます。めっちゃ不安で、全然違うものを持ってきたらどうしよう、と思っていたけど、だんだん(計画が)自分の考えとの差がなくなってきたなと思っている。

【緑山】
社員さんの満足度は高くなってきている雰囲気ですか?

【黄金】
いや、人によってばらつきあると思います。

【蒼天先生】
一つ質問があります。「任す」という意味。何のために社員に任すんですか?
それがちゃんと理解できているか聞きたい。試したい。

【黄金】
また厳しい質問を(笑)
僕の任すという意図は、家業ではなくて事業として継続させていくために、一蓮托生じゃないけど、一緒のスタンスで事業をやってくれる人をつくりたい、そう思うと、ある程度自覚をもってもらうために、というところです。会社が社長のものというのではなく、自分のもの、と思ってもらいたいです。

【蒼天先生】
そんな難しい質問してません(笑)
「任す」ということはどういうことか。その直接の目的は、
「社員に失敗させること」です。
思い切り失敗させる。その気概が無かったら任せたことになりません。
今までの黄金さんの任せ方は、偽の任せ方や。
失敗してもらいましょうや。そういうふうに考え方を変えないと、ということですな。

【緑山】
失敗してもらったあと、私はどちらかというと責任を取らせるという風に思うんですけどいかがですかね?

【蒼天先生】
失敗は成功のもと。失敗は責任を取ることではない。より大きな成功を勝ち取るということ。責任を取らせるという発想が間違い。あえていうなら、上の者はそのときにいっぱい考えるチャンスやヒントを与えるということ。
繰り返しますが、任せるというのは、より大きな成功を収めるために失敗させることなんですよ。失敗してより大きな成功を収められたとしたら、その社員は非常にチャレンジ精神、チャレンジする気持ちがものすごく大きくなる。そのチャレンジする気持ちが社員全員に浸透したらね、戦力は1.5倍から2倍になりますわ。だから失敗させてください。

【緑山】
すごく成功しているやつは失敗の数が多いんですよ。
ただ、失敗ばっかり繰り返して会社辞めていくっていうやつも多いんですわ。

【蒼天先生】
それはトップが悪い。
緑山さん、「非まじめのすすめ」読まはったでしょ? 非まじめになることですわ。

【緑山】
ええ、失敗して去ってったやつは非まじめじゃなくて不真面目だという風に思います。

【蒼天先生】
要は、非まじめの面白さ楽しさを社員に示したらいいわけですよ。それとなく。
あの本、10回ほど読んでください。1回では十分理解できてません。

【黄金】
責任を取らせる、ということ、自分でもそこに葛藤があって、痛いほどわかりる。大事な仕事を任せられたんやから、自分はもっとしっかりやらなあかんかったんや、と反省をさせるイメージを、緑山さんが持っているような気がして。
先生がおっしゃるように、あえて失敗させるんだという気持ちでいくなら、上の者が覚悟して任せるなら、責任を取らせるという発想にはならないんだなと思いました。

【緑山】
営業しない営業という話、その営業しない営業を逆に教えていただきたいなと。

【黄金】
うちで扱ってるものはどこでも扱ってるものなんです。
だからお客さんの代わりにお客さんに合うものを取捨選択してあげる、問題を解決するためにはこれとこれとこれを組み合わせてやればいいというように、物を売るよりもコトを売るというところです。
営業として、ホームページでの情報発信はするけれども、お客様の会社に行って「今こう言う物を売ってるんですけど、どうですか」というような営業はしない。

今やろうとしている具体的な仕事のひとつは、「自分の体験したことをお客さんに売ろう」、ということ。
勤怠管理、テレワーク、デジタル化、ペーパーレス、いろいろ扱っているけど、お客さんに勧めるのに自分とこで体験していないなんてありえないので、自分とこでやってみて失敗も伝えたりして、自社で改革していることをお客さんに提案したいなと思っている。なので、モノを売るという発想ではなくて、こんな悩み事についてあそこの会社はちゃんと応えてくれるで、と言われるようになりたい。
それをしようとすると、やっぱりうちの課題は人。親切丁寧な対応もそうだし、品質のレベルもそうだし、来ていただけるような対応を うちはしてかなあかんよねっていうことで今取り組んでいるところ。
だからこそやっぱり人に戻るなぁということで、「戦略」とすると、「営業しない商社」というイメージ になるのかな。墨田さんとこも一緒だと思う。

【蒼天先生】
黄金さん、長い話いらんかったなぁ(笑)。今言った、「自分が体験したことをお客さんに売る」ってやつね、そこに尽きる。それをどんどん進めていく、これほど強いものはない。だってどんな質問をしても、どんなトラブルがお客さんに起こっても、全部自分で体験してたら対応できるやんか。そのビジネスに変えていったら?これはあなたのところの一番の戦略になると思うわ。あなたの口から出てきたから。
この一言でよかったんや、今日は、ほんまに(笑)
体験したことを売るっていうのをビジネスにしているのは、まだほんの一部やと思うわ。それを、いかに早く広めていくか。社内の装備を整えないといけないわけやん。その整える中で社員も育つわけやん。一挙両得か、もっと得か知らないけれど。もうこれで決まりましたな。あなたのとこの戦略はそれだけ。たくさんのものを扱う必要もなくなるかもしれないね。営業もしなくていいし。

【桜庭】
戦わない戦略って、昔そんな言葉も流行って、私、本も買ったことがあって、それが理想ってことは確かにそのとおりです。
経営も人間がやることで、「戦略」っていうのは人がするものなので、戦わないっていうふうに決めたら、自分の周りのいろんなあらゆる人間と戦わないようにしない限りは、よその会社とも戦わないようなポリシーは取れないんじゃないかなと思う。経営戦略としてはよそとは戦わないようにするんだけれども、交友関係とか、こういう会で論戦を交わすのは別としても、何かを戦わせるということが身についている人間に戦わない戦略っていうのは取れないと思う。なので、黄金さんが凄く変わられて、温和になられて、あ、こういう状況なら誰とも戦わないっていう戦略が取れるんだなって思った。

「非まじめのすすめ」、私も買いました。読みましたし、付箋もしてるし、マーカーも引いて読んでるんですけどね。
さっきの緑山さんの質問に関して、この本に、責任取らせるような仕事の任せ方をするような会社からは、いい人間はどんどん流出していきますと。失敗してもいいからやりなさいと言って、左遷もさせないような会社がいいと書いてありますし、そうやな、と。
いまの黄金さんなら失敗してもいいし、よくがんばったとトライアルをしたっていう心意気をかってあげられるような気がcするし、失敗した原因も考えさせられそうですし、すごく人も伸びるんだろうなと思った。

この「非まじめ」ってね、みんなこの会にいる人間って非まじめだと思っている。というのは、経営戦略の研究をする会なのに、人生だとか、考え方だとか、およそそれらしくないことばっかりしゃべってると思うんです(笑)。 だから、真面目に戦略を語る会だと思って来た人は、真面目な人間ならたぶん抜ける。みんな非まじめだからここにいると思う。そういう意味ではすごくポテンシャルを、非まじめの要素を、みんな持っている。ほんとにいい本だと思ったし、また皆さんも機会がありましたらぜひぜひお勧めいたします。

【黄金】
みんな私が変わった変わったって言ってくれはるけどね、そんなことないんでね。ある時昔の癖が出たりとか、まだまだあるんで。ガラッと変わるなんてできるわけないんで、そこはちょっとなんやええこと言うとったけど前といっしょやんけ、ということも出てくるかもわからんから、あんまり上手言わんといてねみんな(笑)

【白石】
でもやっぱり変わってはると思う。今回の黄金さんの戦略は、簡単明朗な戦略なんだなと。前の黄金さんだったら、時間の中に言葉押し込めた戦略を語られていたと思う。

「非まじめのすすめ」、まだ読んでない。自分の中でしこりがずっとあって、今読んだら迷走してしまう気がして。まだちょっと読むには早い、夏ぐらいになるかなと思う。

黄金さんがJCされてたこと、今黄金さんに憧れているのもあって、この4月から、地元の工業会の会長に立候補した。(メンバー驚き)
先生には怒られるかもしれまないけど、いったんそういうこともやって、新たな自分をもう一回踏み出さなあかん時期が来たのかなと思って、自分に負荷をかけた。

【蒼天先生】
白石さん、それ経験しとき。
対外的にね、会社のトップとしての集まりとか、同業の集まりと違って、工業会っていうのはいろんな人間がいるし、大企業もいるし、いろんな人材との出会いがあると思う。その中で揉まれるのもいいんじゃないですか。
ひとつだけ注意することは。今までの既成事実とか固定観念に、絶対に振り回されたらあかんということ。これはね、押し付けられますよ。今までこうしてたのに、君になったらなんでこうなんねん、そういう話が必ず出てくる。そこのところで悩まなければならん、あるいは解決しなきゃならない大きな課題が出てくると思う。その試練一回通り越さはったらよろしいやん。

【白石】
ええ、その負荷を一回味わってみたいなと。
今、工業会でも下で残ってくれてる子がだいぶやってくれてるんで、さっきの黄金さんの話みたいに人に任せて、自分は違うことをして脱皮しようと思ってやっている。


【蒼天先生】
みなさん「非まじめのすすめ」ぜひ読んでくださいね。これはすごい本です。奥が深い。だからゆっくり読んでもらったらいいと思います。kindle版でよいから。

 

今回は、蒼天先生から、「ひとこと、言葉を」とご依頼をいただきました。ひとことよりは、だいぶ長めになりましたが、心の叫びを文字にさせていただきました。よろしくお願いいたします。

 

議事録作成者の声

2020年5月から、議事録の担当を始めて、1年が経つのだなと少々深い気持ちになっております。
もがきながら、ひとつひとつ丁寧にやることを継続していくことが、力になり、思考を深めることになり、そして仲間を大切に思うことになり、生き方を豊かにしてくれる、ということを、人体実験として証明できるのではないかと思えるようになりました。

わからないことを放置しない
違和感は徹底的に解明する

それは議事録に限らず基本的なことだし、当たり前のこと。
大事だってわかっていても、その理屈を知っているだけでは、ちっともやらないし、身につかない。

でも、議事録をやらせてもらっているおかげで、その姿勢が、何となく身についてきたように思うのです。

例会3時間の文字起こし。
「彼は、彼女は、この発言で何を伝えようとしているのか」
そこにフォーカスしながら、何度も聞き返し、読み返し、重複するところを省略し、主語と述語を入れ替え、若干の方言は残して個性は殺さず、という、職人的な作業の連続です。
「主観的になってもよい」というお許しをいただいているので、「とげとげしいな」「記録として残すには、少々残念だな」という表現は、まるい表現に変更するもしくは省略する。
地味な作業ですが、メンバーの発言をお預かりしているという気持ちで、取り組んでいます。

わからないことを放置しない
違和感は徹底的に解明する

この姿勢は、些細な日常のできごとにも、どうやら反映されているようなのです。

「なぜ私はこの人のこのひとことでむかついているのか」

「むかつく」ということは、自分がこうあるべきだと思っている常識の観念、期待の観念という固定観念に反する行動を相手がとったから。
よく言われる「相手は鏡」、これもそうで、自分にも同じような部分があるから、腹を立ててしまうんだ。

という、どこかで読んだような理屈が、割とすっと入ってくるようになった。
そこで違和感は消滅し、あ、今自分はこのむかつく人と同じステージにいるんだなと、納得する。そう認識するだけでもう、相手への批判の気持ちもなくなるし(だって自分自身の姿だから)、むしろ気づかせてもらったことへの感謝みたいな気持ちになる。

例会での皆さんの発言に対してだけではなく、自分自身の感受性に対しても、「結論が出るまで考える」「なぜそうなったか考える」という癖、みたいなものが少しついてきたのかなと思っています。
議事録から、こんなことも学んでおります。

どうしても特筆したいことが、あとふたつあります。

ひとつめは、思い出しても泣きそうになること。
事務局のおふたりから、文字起こしやりまっせというお申し出をいただいたこと。
7割の時間はそこなので、そりゃもう、こんなにありがたいことはありません。
私としては、「議事録やります」と手を挙げてしまった手前、「できひんねん誰かてつどうて」とは死んでも言えないわけで、仲間からの歩み寄りが、これほどに嬉しかったことはありません。
今では3人で文字起こしを分担し、最後に私が編集する、という流れで、チームで作成しています。それでも弱音を吐きたくなるときには、弱音を吐けるようになりました。

ふたつめは、仲間の声を何度も聴いて、文字にすることで、仲間への愛情が非常に高まってきたこと。
勝手に何度も再生しているだけなので、これはもう、片思いでしかないけれども(笑)、すごく理解できたような気がするのです。
自分のこともそうですが、他人のことを理解するなどということは、簡単にできることではありません。でも、明らかに、他人によって、自分は生かされているので、ほんの一瞬でも、ほんの些細なことひとつだけでも、他人と心の交流ができるということは、奇跡であり、喜びです。

もうすでに、自分は幸せである。
もうすでに、自分は宝物をいっぱいもっている。

そしてまた、次回の例会を迎えるのです。
チョコレートを食べ散らかしながら、のたうち回りながら文字起こしをするのです。
目先の利益、そんなものはありまへん。口内炎をいただくくらいです。
でも、議事録を作成することは、確実に自分を育ててくれます。豊かにしてくれます。そして他人への愛情と感謝が生まれます。

苦しみと喜びの表裏一体、
体験してみたいメンバーがおられましたら、いつでも、お声がけいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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