10年10倍ムーンショット計画に挑む

百年企業研究会には一貫した考えがある

百年企業研究会の一貫した考え、それは企業の発展を目的にしていないこと。
経営者の飛躍的な成長を図ることを唯一の目的にしていることだ。
中小企業は経営者の「器」が大きくなれば、放っておいても企業は良くなっていく。
経営者(つまり人)の成長を目的にしていれば、メンバー間の利害関係は生じない。何事も包み隠さず本音で議論を展開することができる。

設立は2008年10月

メンバー募集に際し、次の条件を付けた。3つの不文律を受け入れてくれる経営者に絞り込んだ。

 ・月1回例会を開催するが、特別な事情がない限り欠席を認めない。
 ・本音で議論する。都合の悪いこと、話したくないことも包み隠さず議論する。
  議論の内容が外部に漏洩しないように「念書」の提出を義務付ける。
 ・1人はみんなのために、みんなは1人のために(One for all,All for one)の精神を貫く。

都合の良いときだけ出席するという「二番煎じ」の研究会では、研究会の目的は達成できない。
都合の良いときだけの出席では継続性が失われ、議論を積み上げることは困難になる。さらに、メンバー間の繋がりもなかなか進まない。
併せて、巷にあふれる経営者団体(組織)とは一線を画したいという強い思いもあった。
無断欠席者は即除名する方針で臨んだ。

中小企業発展の道は1つしかない

それは増収増益を続けることでも規模拡大でもない。
経営者の「意識」を変えることだ。
人間は意識を変え、考え方を変え、行動を変えれば、人生を変えることができる。
日々同じことを繰り返しているだけでは頭(脳)はどんどん固まっていく。人間は日々進化と退化を繰り返しているから、意識を変え、考え方を変えないと退化の一途をたどっていく。
1年前も3年前も5年前も同じことを言っている経営者(人)をよく見かける。Facebookなどでも、数年前からいつも同じような記事を投稿している。このような経営者は要注意だ。

中小企業は大企業を小型化したものではない

大企業と中小企業はまったく異質の存在になっている。
右肩上がりの時代は、大も中小もマーケティングは必要だった。拡大するマーケットをいかに自社に取り込むか、同じことを考えていたが当時はそれで良かった。
今は違う。
異質の存在になれば、抱えるテーマも課題も異質になる。
大企業のメインテーマは、縮小するマーケットに歯止めをかけ、シェア拡大をいかに図るか。過当競争をいかに勝ち抜くかである。
中小企業は過当競争の渦中にあっては「勝ち目」はない。大企業に弾き飛ばされるだけだ。過当競争を高みから見物をしていればいいのだ。
中小企業のメインテーマは、いかに独自のマーケットをつくりだすか。そして、それをどのようにし実践していくのかにある。
メインテーマの取り組みには、ビジネスモデルもマネジメントもマーケティングも要らない。型にはまってしまうからだ。型にはまると「並みの人」になってしまう。
並みの人とは、みんなが考えることを考え、みんながしていることしかできない人だ。良くも悪くも特徴のない人、常識を超えられない人だ。並みの人では並みの人生、並みのビジネスしか期待できない。
今、求められている経営者は「偏差値」の高い人である。とことん枠からはみ出した経営者だ。並みの人とは真逆の経営者だ。

提供する商品・サービスの質が高く、より低廉であれば売れる。これは大企業の常識である。
過当競争に勝ち抜く「基本の基」である。
中小企業はこれだけでは売れない。
中小企業は顧客の心を動かさないと売れない。顧客の心を揺り動かす「何か」を備えていなければ売れない。人の心を動かす何かを創り出すのは人である。その人(経営者)の存在が雌雄を決する時代になっているのだ。
今までのように、マーケティング戦略や販路開拓など小手先のことにあれこれ取り組んでみても売れる決め手にならない。
決め手になるのは、マーケットにおける経営者の存在感である。存在感を左右するのは、人としての「器」の大きさである。

ビジネスは、真っ白な画用紙に自分の思いを自由奔放に描くことから始まる。ここでも器が試される。
与えられたフォーマットに記入してもビジネスは始まらない。もし始められたとしても計画通り進むことは、まずない。フォーマットによって経営者の思いがどんどん削られ、並みの人に陥り、並みのビジネスになってしまうからだ。
ここで経営者の成長の鈍化が始まる。
ビジネスプラン、経営計画、経営革新、補助金申請など、いずれもフォーマットが準備されているが、これらによって経営者はさまざまなものを失い、併せて、自由奔放な発想も失っていく。
こうして考える時間を失い、成長が妨げられ、人間としての器もフォーマットという枠組みに閉じ込められ大きくなれないのだ。
大企業は多くの(優秀な)社員が経営者を支えてくれる。
中小企業を支えるのは、まず自分以外に誰もいない。まだまだこの自覚が足りないのだ。経営者のこの自覚の欠如が中小企業発展の大きなブレーキになっていることは確かだ。
しかし、多くの経営者は(関係者も含め)まだこのことに気付いていない。

まず、土台固めから

研究会が発足して最初に取り組んだのが「土台固め」である。器を大きくするのが目的だ。
根を深く広く張る。大樹も根が脆弱であれば強風が吹けば倒れる。中小企業も変わらない。当時、多くの経営者は目先の売上には敏感であるが、根を張ることには無頓着であった。研究会に参加したメンバーも例外ではなかった。
土台固めに11年近くの歳月が必要だった。
まだ、土台が固まっていない経営者(企業)もいるが、考え方は浸透したと考えている。

中小企業は嵐の中を生き抜かなければならない

経営環境もどんどん変わっていく。
慢性的供給過多、格差時代、一強九弱時代、さらに、労働力不足は中小企業を直撃し、「大廃業時代」の到来は必至の状況にある。
淘汰のうねりが一挙に押し寄せる。この先何が起こるか分からない。「丸腰」では生存が困難な時代が到来しつつあるということだ。
経営に対する考え方も変わった。
ピーター・F・ドラッカーのマネジメントも中小企業では有効に機能しなくなってきている。
命題も変わった。
規模拡大、利益拡大から経営者・社員の「幸せ」を追い求める経営に。
過去の業績や名声だけでは継続できない時代が、一気に加速する。

10年10倍ムーンショット計画の取り組みが始まった

百年企業研究会は発足して11年、「第二ステージ」を迎えた。
14名のメンバーは、業種も規模も活動するフィールドもすべて違う。人生観も価値観も事業観もみんな違う。
所在地も滋賀県6名、京都府5名、長野県2名、福岡県1名と広がっている。
「本物の価値」を求めて集まってきた、個性あふれる偏差値の高い人間集団、変人集団であることは確かだ。
2019年9月「10年10倍ムーンショット計画」という無謀な取り組みを開始した。
10年以内に人として経営者として10倍の成長を目論む計画である。
なぜ10倍なのか。
10倍の成長を考えた方が、10%の成長を考えるよりはるかに面白いからである。楽しいからである。

改善型目標ではイノベーションは起こらない

10年10倍ムーンショット計画は極めて無謀な計画である。
なぜ無謀なのか。
無謀な目標を設定して取り組む計画であるからだ。

目標には概ね2つの考え方がある。
 ・改善型目標
 ・無謀な目標
改善型目標は顕在化している課題に対して、それを解決していく問題解決型思考である。
対前年比、売上10%アップ、生産性10%アップ、シェア10%アップなど、今まで使い古された目標である。現状延長線上に未来があるときは有効だった。
しかし、この発想ではイノベーションは起こらない。惰性経営に陥っていくだけだ。

無謀な目標とは、実現の可能性を無視した目標である。一見、無責任な目標である。
はっきりしていることは、今までのやり方(アプローチ)では実現が不可能であることだけだ。発想の根本を変えないと可能性を見出せない、創造力が求められる目標である。未知の世界に足を踏み入れる目標である。
イノベーションは自由奔放に創造力をフルに発揮すれば実現できるはずだ。土台が盤石であれば、思い切って結果を恐れずチャレンジできる。

成果を管理する目標から、モチベーションや創造力を引き出す目標へ。
この2つの目標は原点が異なるから、実現に向かっての取り組みも異質になる。
改善型は「改善目標」がある程度イメージできているから、その目標に向かって梯子を一段一段上がっていけば実現できる。手法や努力の程度で実現までの期間に差が生じても、たどり着くことができる。
無謀型は目標がイメージできない。
10年後に10倍に成長した自分をイメージすることは困難だからだ。
今までのやり方の踏襲では、いくら頑張っても20~30%程度止まりだ。目標の桁が違う。筋書きもない。参考になる専門書もない。一段一段上がっていく梯子もない。はっきりしていることは、山に登るスキルより、登りたいという熱い思いが求められることである。
相当クレイジーな取り組みになるだろう。
ただ、10年という期間がある。多少心の余裕をもって臨むことができる。
大切なことは、現状の枠組みの中で考えてみても意味がないということだ。自分の殻を打ち砕き、枠からはみ出し、野山を駆け巡る子供のように自由奔放に思いを巡らしながら、夢を追いかけることができるかどうかだ。
当分、試行錯誤が続くだろう。その繰り返しから手探りであっても、そう遠くない時期に一定の方向性を見出せるかも知れない。

読むドラマ ~チャレンジの道~(例会議事録)の公開に踏み切った

2019年9月例会(第132回例会)から議事録を一新した。
3時間の例会をビデオカメラに収め、プロのライターに「読むドラマ」として執筆をお願いした。例会で議論したことをStoryにした議事録である。字数で10000~15000、A4で20枚をはるかに超える。
議事録を「読むドラマ ~チャレンジの道~」と命名した。
すべて仮名であるが、議論したことがそのまま掲載されている。臨場感あふれる議事録だ。

議事録は研究会の「日記」である。
メンバー1人1人の成長と研究会の成長の軌跡が記されることになる。
無謀な目標には達成マニュアルはない。迂回に迂回を重ねながら進んで行くことになる。だから、そのプロセスを残しておくことが極めて重要なのだ。
未知の世界に足跡を残す。
ここにはメンバー1人1人と研究会の成長の軌道が記されているから、自分だけではなくメンバー1人1人の異なる歩みを垣間見ることができる。
1人1人の成長が研究会という組織の発展にどのように機能しているか、個人と組織との関係もその気になれば理解することができるだろう。
1年、2年……5年と議論を積み重ねた成長の軌道は「ノウハウ」となって残る。
ノウハウはわれわれの「共有財産」だ。この世で唯一つしかない共有財産だ。
この財産をオープンにすればどうなるだろうか。
どんな波紋が広がっていくのだろうか。
恐らく、われわれと志を同じくする経営者、明るい未来に向かってひた走る経営者との出会いがあり、連帯の輪を広げることができるのではないか。そして、14名では見られなかった新しい世界をみんなで見ることができるのではないか。
20名の定員に対し、6つの空席もある。
「読むドラマ~チャレンジの道」は、長い長い議事録である。一読するだけでも時間がかかる。しかし、関心があれば一気に読める。読めば感じる「何か」がある。

10年10倍ムーンショット計画は始まったばかりである。
10倍の成長は、自分にどんな変化をたらしてくれるのだろうか。どのような「幸せ」を手に入れることができるのだろうか。期待に胸が膨らむ。
10年先を見据えながら、はやる気持ちを押さえながら、熱い熱い議論を展開できるに違いないと、密かに期待しているのである。

令和元年(2019年)11月

百年企業研究会 代表幹事
田中 義郎
(C³ personal creates)

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