会員コラム

第4回“田中組”で成長

私は、滋賀の自宅で小さな塾を経営しています。経営といっても、内職に毛が生えたような小さな街の塾。そんな私が、この研究会で何をしているのか?

FCではなく、自己流で17年間細々と続けてきました。これは始める直前に田中先生の講座を地元の商工会でうけたことと関係ないわけではありません。その田中先生に誘っていただいてこの研究会に入りました。入って約4年間。確かに何かを得ることができたことは実感しています。

 

この研究会は、”田中組“という一つの学級のようです。田中組は、いろんな人がいます。私のような小さな個人事業主から法人の会社の経営者、起業している人、先代から仕事を引き継いだ人、これから起業しようという人など。

田中先生は、私たちの担任。私たちの経営者としてのいろんな段階、経営状態、その人の性格をよく把握されています。それぞれの段階に応じて、今考えるべきことを的確に指摘されます。厳しいことをおっしゃる先生ではありますが、ちゃんと成長した時はそのことを伝えてくださいます。

これは、教育において一番見逃してはならないことなのです。言いっぱなしでなく、指導しっぱなしではいけない。田中組の場合、売り上げが上がっても実はあまりほめてもらえません。経営研究会なのに・・・です。

 田中先生とお出会いしてから、先生がおっしゃっていることは、一つだと私は捉えています。

「常に進化できる人間であること。」

これを言い続けること。そこに先生の妥協はありません。先生は、コンサルタントでもありますが教育者としての姿勢も持っておられます。

 

 ですから、その人なりの”進化“があった時こそ、成長があった時こそほめてもらえるのです。“ほめてもらえる”とは少々子供っぽいのですが、人間はいくつになってもほめてもらえるのは、うれしいことです。まして、経営者の立場になると批判はされても、ほめてくれる人はいません。そして、“クラスメート”である仲間たちも、成長した時は見逃さずちゃんと認めてくれるのです。

 

 私がこの研究会に入った時は、フランチャイズの塾経営に失敗し、大きな借金を抱えていた時でした。借金があるから、やめるわけにもいかない。しかし、何をどうすればいいのか?売り上げを上げる?広告をうつ?どうすれば、続けられるのか?

 先生に誘っていただいて参加はしたものの、皆さんのレベルが高すぎる。まともに企業で働いたこともない。社会の厳しさも知らない私が、ここにきていいのか。出される課題をこなしても、その時の間に合わせの言葉と計画は、すぐに見破られてしまう。浅い考えやその場限りは、通用しない。行くのが嫌になりながら、通った時期もありました。

 そうした時に光が見えたのは、一人の先輩でした。はじめはその人もつっこまれぱなしでしたが、ある時期からみるみる変わっていかれるのが私の目にもわかりました。あまり自信のなかった姿から、経営者の顔になっていかれたのです。

 「そうか、私もここにいればその人のようになれるかもしれない。もう少し頑張ってみよう。」

 研究会では、田中先生と幹事の方でいろんな課題を考えてくださっています。その年の抱負や自分を「木にたとえると?」とか、10年計画とか。

そうした課題をこなしているうちに、自分の経営の問題点や日々の成長の方法などを考えるようになります。業種の違う仕事であっても、仲間の問題点をみんなでいろんな方面から考えることによって、思わぬ考えが出てくるものです。

「なるほど。そういう考えもあるのか・・・」

友達同士でもなく、ライバルの同業者でもなく、しがらみのある仲間内でもない。共通点は、経営者であるということだけ。だからこそ、遠慮なく、それぞれの視点から問題点を見ることができるのです。そうしたケーススタディーをこなしていくことが、自分だけではできない経験や思考を導いてくれるのです。

 

 自分では、もう行き詰って研究会をやめようと田中先生に電話した時でした。私が話し出す前に

「杉本さん、あなた、ちょっと変わったね。よくなってるよ。」

自分では、まったく意識してなかったのですが先生のおっしゃることは、腑に落ちました。なんとなくではなく、先生はちゃんと裏付けをもっておっしゃってくれていたのです。

いつの間にか、成長、進化を遂げていたようです。そのころから、自分らしい塾の経営というのに行き着くことができました。

 見た目は、以前と変わりありませんが、私が“私の塾を経営する意識”が随分変わりました。私の塾の役目は“地域のおかあちゃん“であり続けることでした。保護者が安心して通わせられる場であること。子どもたちが学校の先生でもない、親でも親せきでもないからこそ、解放される空間と時間を与えること。塾とはいいながら、子どもの一つの居場所としての在り方が、私らしい塾の経営であるということに今のところ行き着いています。

 

 自分で事業を続けていくということは、今いる立場といろんな視点からものごとを常に見つめ、考え、実行し、検証していかなくてはなりません。しかし、自分の問題を客観的に解決するのは難しいことです。同時に自分では当たり前のことが、実は強みになるということもあります。

 自分らしい事業をしたい。こういう時代だからこそ、自分しかできない事業があるはずです。小さいからこそ、そうした個性を生かした事業ができるのだということが、私がこの研究会で学んだ一番大事なことです。

 

2018.11.30
あっぷるりん教室 杉本 和子

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