会員コラム

中園 陽二
氏名
中園 陽二
会社名
株式会社 晴々屋
部署・役職名
代表取締役
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第17回嫌われる勇気

暖冬である。
いつもなら家の前から見える比叡山が白くなっている時期だが、この冬はほとんど白くなっていない。
少し家から歩くと比良山系の山々が見える。しかしそこもほとんど雪がないようだ。
びわ湖バレイスキー場のある蓬莱山の頂上に、わずかばかりの雪が見えるが、おそらくはほとんど人工雪だろう。
過ごしやすくはあるので個人的にはありがたいが、同時に異常だな、とも思う。
スキー場やスキー用品を扱っている店などは今季は売上減で大変に違いない。

2019年から、研究会で「メンバーを深く知る」という取り組みを行っている。
11月・12月は私の番で、私のことを研究会の皆さんに深く知ってもらうための発表を行った。
これまでどういう人生を歩んできたかを文章にまとめ、それを皆さんに読んでいただいた上で発表し、様々な意見をいただいた。

その中で、メンバーである田中眞理さんが「嫌われる勇気」という本を推薦してくれた。
そこでハッとした。
あぁ、確かに自分は「嫌われたくない」と思っているな、と妙に納得した。
タイトルがまず刺さった。
買って読ませてもらったら、内容はさらに刺さった。
刺さったが、それは傷つけようとする鋭さではなくて、病気を治すために患部をメスで切るような、そんな癒やしを伴った鋭さであった。

嫌われるというのは、意外と難しく、覚悟がいる。
全員に好かれようとしている。
それはスタッフにも、顧客にも、知り合いにも。
言うなれば八方美人的な性格、と言えるかもしれない。
自分はこういう考え方だ、と提示した上で好きになってもらうのではなく、自分の方が相手に合わせる、という形。
それをずっと続けてきたように思う。
なぜだろうと考えてみると、やはり嫌われたくない、争いごとをしたくない、もめたくない、という思いからだろう。
要は傷つきたくないのだ。
誰しも、嫌われたいと思って行動する人はいないのだろうが、あまり嫌われたくないと思いすぎると、何も行動できなくなってしまう。
そしてそれが結果的に、自分を殺していく。

例えば、納期の短い仕事を無理やり頼まれた時。
「あぁ、いいですよ。なんとかします」と答えて請けてしまう。
一見顧客のためを思って答えているようで、実は自分が嫌われたくないから請けている、のかもしれない。
その場合、スタッフに迷惑がかかるのだが、スタッフにかかる迷惑と、顧客に嫌われること(そしてその後仕事をもらえない恐怖)を天秤に、仕事を請けるという選択をする。
ここで「嫌われる勇気」があればどうか。
明確に自社で仕事を受ける基準(=断る基準)があれば、「すいません、当社ではこういう理由でこの仕事はお請けできません」となる。
特段おかしなことではないし、相手からすれば「あぁそうですか。じゃあ今回は他のところに頼みますね」というだけの話である。
むしろ、変に無理して請けてしまって、納期を守れず迷惑を掛けるほうが、信頼をなくす。
そう考えると、仕事を断るということもあながち悪いことでもなく、転じてよい印象につながる可能性もなくはない。

人は往々にして他人に好かれたがる生き物であるが、それを気にせず我が道を行く人もいる。
言いたいことを言い、自分の思うように行動する。
そういう人は大抵魅力的で、輝いていて、人の目を集める。
嫌いと言う人もいるかもしれない。でもそういう人は実は少数である。
その少数を気にして、自分の意見が言えないというのは実にもったいないし、自分の人生を生きていない、ということにもつながる。
多少嫌われてもいいから、自分の本音をさらけ出して、伝える。行動する。
その覚悟が必要なのだ、と改めて思い知った。

実にシンプルで、小学生でもわかるような話である。
しかし、これまでの苦い経験に固定概念というスパイスが加わって、煮込まれ、凝縮して、結果「臆病」という料理が出来上がる。
今までその料理を食べすぎたな、と思う。
結局は「本音」を口にすることから逃げていたのだ。

冬の寒さは誰しも辛いし、雪が降れば外出もしにくくなって困る。
でもそんな寒さを待ち望み、ウィンタースポーツを楽しむ人もいる。
寒い中の鍋料理を心待ちにする人もいる。
寒さを肯定的に捉えるか、否定的に捉えるか。要は捉えようなのだ。
そして、どう捉えるかは常に相手(受け手側)の問題である。

まずはその「捉えてもらうもの」をこちらが出さないことには始まらない。
自分はどういう人間です、ということを。
それを提示した上で、理解してくれる人と手を繋げばよいのだ。
(そもそも、自らの思いを伝えないと、真の理解者も現れないだろう)

2020年はもうちょっと本音で生きようと思う。
それはきっと、嫌われるだけではなく、いい効果も生まれるはずだ。
肯定的に受け取る人と、否定的に受け取る人。
まぁどちらもいて当たり前。それでいいじゃないか。
暖かい冬もいいけど、寒い冬もまたいとおかし。
ちょっと雪が恋しくなった。

2020.01.14
株式会社 晴々屋 中園陽二

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